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学術フロンティア

2008/04/07
本学の研究プロジェクトが、
2005年度、文部科学省学術研究高度化推進事業の
学術フロンティア推進事業(平成17年度〜平成21年度)に選定されました。

文部科学省学術フロンティア推進事業は、私立大学の大学院研究科・研究所の中から、重点的研究領域ごとに、優れた研究実績をあげ、将来の研究発展が期待される卓越した研究組織を「学術フロンティア推進拠点」に選定し、内外の研究機関との共同研究の実施に必要な研究施設、研究装置・設備の整備費及び研究費等に対する重点的かつ総合的な支援を行うことにより、私立大学における研究基盤を強化し、学術研究の推進するプロジェクトであります。平成17年度、この「学術フロンティア推進事業」に徳島文理大学の健康科学研究所を核にして薬学部・香川薬学部の共同で応募した「X線結晶構造解析と質量分析による生理活性タンパク質の構造機能相関の研究」が採択されました。
本研究は2つグループの異なるテクノロジーを用いた物性研究班と3つのグループからなる様々な研究領域のタンパク質研究班との有機的な繋がりにより、より発展した研究を目指そうとするものであります。

《プロジェクト名》
ーX線結晶構造解析と質量分析による生理活性タンパク質の構造機能相関の研究ー
(1) X線結晶構造解析による蛋白質複合体の立体構造解析
(2) コールドスプレー質量分析法の構造プロテオミクスへの利用
(3) システインプロテアーゼと内在性インヒビターによるアポトーシス制御
(4) 細菌毒素とシグナル伝達に関わるタンパク質の機能解析



【 研究プロジェクトの目的・意義及び計画 】
この共同研究の目的は、2つの異なる手段であるX線結晶構造解析と質量分析を用いて、活発な3つの生化学グループとの有機的な連携により、タンパク質複合体分析手段の開発とその応用を進めようというものである。
(1)タンパク質X線結晶解析を中心の方法として研究を推進する〔津下〕
(2)新しく開発したコールドスプレーイオン化質量分析(CSI)をタンパク質に応用しようとする〔山口〕
(3)システインプロテアーゼと内在性インヒビターによるアポトーシス制御〔石堂、勝沼〕
(4)細菌毒素とシグナル伝達に関わるタンパク質の機能解析〔櫻井〕
(5)超好熱菌酵素の構造と機能解析〔大島(共同研究機関)〕
上記の共同研究でタンパク質特にタンパク質複合体研究への応用研究を目指す。

特にX線結晶構造解析により酵素反応複合体等の弱い複合体の解析ができれば、1つの大きなブレイクスルーとなる。すなわち酵素と基質タンパク質の複合体の結晶化およびその解析を大きな目標とする。また、コールドスプレー法の高分子への応用を視野にいれ、弱い相互作用を持つタンパク質−タンパク質、あるいはタンパク質−低分子の質量分析の応用を目標とする。これらの成果は学術的に意味があるだけでなく創薬にも重要な手段を提供する事になる。


【 研究プロジェクトの進捗及び成果の概要 】
津下はX線結晶構造解析を主な研究方法をとして用いて重要な酵素の構造を明らかにしてきた。この結果をPDB登録し、14編の英文論文にまとめた。
(1)「L-プロリン脱水素酵素(PDH1)のX線結晶構造解析」(大島・櫻庭との共同研究)を行った。PDH1は、αβの二つのヘテロサブユニットからなる。我々はαβサブユニットへテロ複合体八量体の結晶構造を明らかにした。FAD,FMN,ATPの3つのコファクターを持つ新規の複合体であり、ユニークな電子伝達パスウェイおよびサルコシンオキシターゼとともに新たなジフラビン酵素ファミリーを形成することが明らかになった。(2)「アクチンとIota毒素の複合体のX線結晶構造解析」(櫻井、永浜、小田との共同研究)は、弱い相互作用をもつADPリボシル化毒素と高分子基質アクチンとの相互作用を明らかにしたものとして、極めて重要な成果である。ADPリボシル化毒素はその基質特異性により4つのグループに分けられる。2003年に我々はアクチンを特異的にモノADPリボシル化するC.perfringensのIota毒素の酵素ユニットIa単体の結晶構造を明らかにしている。この研究をさらに進めて今回アクチンとIota毒素の複合体のX線結晶構造解析を行った。この構造解析成功のキイは非水解性のNAD類似化合物βTADを用いて2つのタンパク質の安定な複合体結晶を得た事にある。この結果、その基質認識機構、およびADPリボシル化するその反応機構について重要な知見を得た。(3)大島を中心として、超好熱菌由来のグルタミン酸脱水素酵素、アスパラギン酸脱水素酵素、リシン脱水素酵素の構造と機能が明らかになった。

山口,壇上は(1)コールドスプレー装置の改良とタンパク質分への応用(2)コールドスプレーイオン化による測定法の開発を行ってきた。低分子のコールドスプレーイオン化法による測定は弱い相互作用を維持したまま測定できる手段として注目を浴びている。生体高分子への応用は魅力的であるがこれへ向けての応用研究を進めている。
石堂はリソソーム内のプロテアーゼを阻害するシスタチンBがユビキチンで修飾される事により、初めて細胞死を抑制する事を見いだした。勝沼はアポトーシスのキイエンザイムであるプロカスペース3の活性化機構に新たなタンパク質が関わる事を見いだした。すなわちNAD合成系の酵素キノリン酸フォスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)がプロカスペース3の活性化および核内移行に関わっている。この結果は、QPRTが細胞の生と死、両方に関わるという重要な知見である。

櫻井、永浜、小田, 小林はスフィンゴミエリン代謝系酵素の研究を押し進めてセレウス菌スフィンゴミエリナーゼの結晶構造解析に成功した。この結果、2個の金属イオンの結合した活性化部位の構造を高い分解能で明らかにした。また現在セラミダーゼ、スフィンゴミエリナーゼ等の生化学および構造解析を進めている。


【 研究組織 】
研究プロジェクトに参加する主な研究代表者
津下英明 〔健康科学研究所・教授〕 
【プロジェクトでの役割】 プロジェクトの統括、蛋白質立体構造決定(X線結晶構造解析)
【プロジェクトでの研究課題】 タンパク質複合体のX線結晶構造解析
山口 健太郎 〔香川薬学部・教授〕 
【プロジェクトでの役割】 蛋白質立体構造決定(質量分析)
【プロジェクトでの研究課題】 コールドスプレー質量分析法の構造プロテオミクスへの利用
石堂 一巳 〔健康科学研究所・教授〕 
【プロジェクトでの役割】 個々の重要な酵素によるシグナル伝達解析
【プロジェクトでの研究課題】 システインプロテアーゼと内在性インヒビターによるアポトーシス制御
櫻井 純 〔薬学部・教授〕 
【プロジェクトでの役割】 シグナル伝達と毒素タンパク質の解析
【プロジェクトでの研究課題】 細菌毒素とシグナル伝達に関わるタンパク質の機能解析
(共同研究機関等)
●大島 敏久 〔九州大学・農学部・教授〕 
【プロジェクトでの役割】 重要な耐熱酵素蛋白質複合体の解析
【プロジェクトでの研究課題】超好熱菌酵素の構造と機能


【 研究成果中間報告書 】
平成17年度〜平成19年度
『X線結晶構造解析と質量分析による生理活性タンパク質の構造機能相関の研究』

平成17年度、『学術フロンティア推進事業』に徳島文理大学の健康科学研究所を核にして薬学部・香川薬学部の共同で応募した「X線結晶構造解析と質量分析による生理活性タンパク質の構造機能相関の研究」が採択されました。
本研究は2つグループの異なるテクノロジーを用いた物性研究班と3つのグループからなる様々な研究領域のタンパク質研究班との有機的な繋がりにより、より発展した研究を目指そうとするものであります。
3年間で数多くの英文査読論文および発表を行ってまいりました。これらの成果を3年間の中間報告書としてまとめ、発刊いたしました。


【 私学助成研究発表会 】
平成19年度と平成20年度には2回の学術フロンティアシンポジウムを開催しました。
我々のプロジェクトメンバーの他に平成19年には徳島大学 分子酵素学研究センター 谷口寿章先生また平成20年には大阪大学 蛋白質研究所の月原富武先生を御招きして活発な質疑および討論を行いました。

第2回 私学助成研究発表会が開催されました。
〔日時〕1月26日(土)、1月27日(日)
〔場所〕 徳島文理大学・山城校







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